今回は透析患者さまについて、詳しいお口の中のケア方法をご紹介致します。
【目次】
腎臓は左右1個ずつ、腰のすこし上の高さにあります。
重さは各120~150gほどの臓器で、血液をろ過して尿を生成します。
尿生成の過程で体内の老廃物を排泄したり、水や電解質を調整する役割を担っています。腎臓の構造のなかで重要なのは、糸球体とよばれる血液をろ過する場所で、フィルターの役割を行っています。一度ここに炎症が起こると、本来は漏れるはずのないタンパクが血中から尿中に漏れ出ることになり、その結果、糸球体を含め腎臓全体の繊維化が進み、慢性腎臓病に移行していきます。
患者さまの全身状態は、寝たきり状態や重度の認知症、看取り段階などさまざまです。今回はその中でも、透析の病院に入院されている患者さまの口腔ケアについてご紹介します。
透析患者さまの口腔内の状態
慢性腎臓病(CKD)患者さまの場合、CDKによる骨代謝異常が口腔内にも認められ、歯槽骨破綻を促進するため歯周病が重症化しやすくなります。
さらに透析療法を受けている場合は、唾液腺の萎縮や降圧薬や鎮痛薬などの薬の副作用により、唾液の分泌量が低下し、デンタルプラークや歯石が沈着しやすくなっています。
また、糖尿病の進行によって発症する糖尿病性の腎症の場合、歯周病がさらに悪化する傾向があります。
透析患者さまはCKDの悪化による脳血管障害や合併症など複数の疾患を有していることも多いです。また糖尿病の合併症などによって壊死に至り下肢を切断していたり、移動制限がされていたり、さまざまな問題を有しています。そのため患者さまの個々の症状や体調に合わせて口腔ケアを進めていきます。
透析当日に口腔ケアをする場合は、その時間や体調に特に配慮が必要となります。ヘパリンなどの抗凝固薬を使用されているため、出血傾向となっています。終了時には脱水状態となり、倦怠感が強く認められます。スケーリングなどの観血処置を行う場合は透析日を避けた方がいいでしょう。
口腔ケアに関する安全安楽など基本的なことはほかの患者さまと同じです。
- 口腔ケアを行える体勢や場所を整え、患者さまの全身状態を確認していきます。
(上肢にシャントが構築されているため、圧迫させないよう注意が必要です。また、下肢を切断している患者さまは体幹の維持安定が難しく、車椅子などからの前傾姿勢をとることによりバランスを崩し、転倒や転落の危険性があります。切断側に身体が傾くため、枕や毛布などで支え、場合によっては洗面台ではなく、ガーグルベースンなどを用いて含嗽をしていただきます。)
- 透析患者さまは腎不全による免疫低下や長期の透析により感染の機会が増大するなど、易感染性の状態です。
(感染症に対する抵抗力が弱く、創傷治癒が悪い傾向がみられ、口腔ケアをするときに歯肉や粘膜を傷つけないような注意が必要となります。お口の中の清潔を確保するとともに、お口の粘膜や唇の乾燥対策を行うことも大切です。お口の中が乾燥しているときに入れ歯安定剤を使うと、入れ歯が口蓋粘膜に張りついて取り外しが難しくなることがあるため、入れ歯安定剤や洗浄剤の使用は注意する必要があります。
①バイトブロック②開口器③ハブラシ類
- スポンジブラシ
- 清拭用ウエットティッシュ
- ガーグルベースン
- デンタルミラー
- 歯科用ピンセット
- 吸引管
- 保湿剤
透析患者さまは全身的な病状の把握が必要不可欠となるため、栄養や食物形態、摂食嚥下障害、誤嚥などについても情報を把握する必要があります。
看護師や介護職、管理栄養士、言語聴覚士、社会福祉士、相談員などと情報共有をしながらすこしでも口腔の清潔が管理できるように、口腔ケアを進めていきます。
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